裁判情報

2012年3月、賃貸住宅での自死についての遺族への損害賠償請求に対する地裁判決(関西地区)がありました。この裁判の被告(ご遺族)にご出席いただき、当会勉強会を持ちましたので、要旨をご紹介いたします。
 
■ 原告(賃貸マンションオーナ)の主張

  • 故人の自死は、賃貸借契約違反であり、被告には、相続人かつ連帯保証人として賠償責任がある。
  • 部屋の改修費(リフォーム代) 220万円、家賃補償 707万円 合計927万円の損害賠償を請求。

■ 地裁判決の要旨
  • 心理的瑕疵による改修費の請求は、過剰な自殺嫌悪に基づく考えというほかなく、まさに自殺対策基本法等においても、自殺者の親族を支援する観点から除去すべき偏見・差別的な考えとされている観念というべきで、認めることはできない。
  • 被告は、家賃1年分(78万円及び法定利息)を支払うこと。 原告のその他の請求は棄却。
  • (相続放棄の手続きが3ヶ月以内に取られなかったため)、被告が法定相続人であることに争いはないことから、連帯保証の対象かどうかの判断は不要。
  • 「故人の自死は、賃貸借契約違反には当らない、また責任能力がない。」との被告主張については容認しない。
 
■ 判決に対する評価
    この判決が、改修費用請求は、「除去すべき偏見・差別的な考え」として、明確にこれを認めなかった点、家賃減収補償金額を大幅に縮減したことについては、前進と評価できます。
    しかしながら、「自殺の多くは自由な意思決定に基づく行為ではなく、社会として取り組む課題であること」、「人としての尊厳を侵す問題である」といったところまで、踏み込んで判断頂けなかったことは、極めて残念です。 この問題について、多くの方にその不当性に気づいていただけるよう一貫して訴え、是正を働きかけていくことが大切と、私たちは考えます。
    ※ 賃貸住宅賠償請求問題に関する、当会意見はこちらをご覧ください。

■ 勉強会参加者のコメント、意見など
  • 故人の自死に違法性はなく、国民の人権を擁護する立場の司法(裁判所)が、主観的な(合理的とはいえない)感情に基づく請求を認めることは正しくない。 諸外国に、この様な例は見当たりません。(弁護士)
  • 今回の判決は、ご遺族(及び弁護士)にとっても励みになる。これをきっかけに、司法判断の流れが変っていくことを期待します。(弁護士)
  • 「なんでこんな判決が」という思い。 まだまだこれからという認識。(参加者)
  • 正しい理解、偏見是正のための啓発が大切。(参加者)
  • 原告側の便乗請求が手に取るように感じられ、水面下で泣き寝入りしている遺族もいることを思うと、安易な対応はできないと考えました。 裁判を通じて、自死への偏見・差別からくる奇妙な慣例・判例などが過去にあったことを知り、これを是正するよう闘いたいとの思いになりました。(被告ご遺族)

■ この裁判への当会関係者による協力
  • ご遺族(被告)および代理人弁護士の方への情報のご提供、情報交換や専門家のご紹介
  • 地裁への「意見書」の提出、裁判(法廷)傍聴の呼びかけ
  •  などを行いました。 


最近の判決(裁判)の紹介

■ 損害を、家賃半年分に更に限定した判決 (仙台地裁 2015年9月)
   自死遺族支援弁護団から成果が紹介されています。 こちらをご覧ください。

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